近年よく耳にする『若者の車離れ』、それに伴ってか自動車関連€企業に勤めていても、タイヤ交換方法も
よくわからない、やった事がない、と言う人が多くなりました。

その反面、車に興味はないけども『タイヤは一番大事だから、ブリヂストンに限る!』と言う方も身近に
いらっしゃいます。

確かに日本製タイヤの品質は高く、安心感は格段に良い物だと思いますが、タイヤメーカーによって
様々な技術を駆使して製品化しているので、どこが一番と決めるのは難しい時代かと思います。

使ってみた感覚で、ユーザー様の好みによって選択したものが一番なんじゃないかと言うのが持論です。

『走れれば何でも良いや!』と言う方も少なくはないでしょうが、せっかく自動車に乗るのなら
ちょっとだけでも、タイヤに関する知識があっても良いんじゃないかと思うので、簡単なお話程度を
掲載してみようかと思います。






1. タイヤの役割

タイヤは、車の基本動作である『走る、曲がる、止まる』にかかわるとても重要な部品です。

と言うのも、唯一車と路面に接している部分であり、路面に接している面積は、わずかハガキ1枚分。
この狭い範囲で『基本動作』を確保しなければならないからです。

タイヤに求められる性能は、数多くありますが、基本的な所としていくつか挙げると
  • エンジンやブレーキの力を路面に伝え、速やかに『走る、止まる』に変換する
  • ステアリングから伝わったドライバーの意思を路面に伝え、進む方向をリードする
  • 乗員や荷物が乗った車体の重量、全てを支える強度
  • 路面の凹凸などによる衝撃を緩和し乗り心地を向上させる
  • 降雨時などの排水性を確保し、路面とタイヤをしっかり密着させる
その他には、静粛性や低燃費、ロングライフ(長寿命)なども各メーカーの特徴があるところです。


基本的な求められる性能を挙げましたが、基本動作にかかわる欠陥があるとリコール対象になる事も多々
あり『リコール対象 = 重大な人身事故につながる危険性がある』と理解すれば分かりやすいと思います。

ここで列挙した項目は、車を安全に動作させるために最低限確保しなければいけないことであり
すなわち『タイヤは、命を預かる重要な役割』があるわけです。


2. タイヤの各部名称と役割など

タイヤは、一見するとゴムが輪っかになっただけに感じますが、実際は複雑で緻密な構造になっていて
それぞれの部分で名称がり、それぞれの役割があります。

基本構造は、タイヤ内部に『ベルト』『カーカス』『ビード』と呼ばれる部材が有り、それを覆うように
『トレッド部』『ショルダー部』『サイドウォール部』『ビード部』『インナーライナー』と呼ばれる
ゴム層で構成されています。

タイヤ内部の部材は、タイヤの骨格を形成、剛性UP、気密性の確保と言った役割をしています。

タイヤの断面図があれば分かりやすいのですが、残念ながら内部の画像がないので、各メーカーの
ホームページを参照すれば詳しい図解があります。

目に見えるタイヤ表面部分の名称については、簡単な図解を用意しましたのでご覧ください。
グラフィックス1
名称が分かったところで、各部の役割などについて説明しましょう。


2.1. トレッド部

タイヤが路面と接触する部分で、路面からの衝撃や傷などから内部を保護する役割があります。

トレッドパターンと呼ばれる溝が刻まれていて、排水や摩耗の抑制、グリップ力の確保と言った性能を発揮する部分です。

トレッドパターンは多種多様で、サマータイヤのような『リブパターン』、オフロードタイヤや
スタットレスタイヤのような『ブロックパターン』と言ったものがあります。


2.2. ショルダー部

タイヤの肩に当たる部分なので『ショルダー』と呼ばれています。

内部の部材を保護しつつ、走行時に発生する摩擦熱を発散させる役割を持っています。


2.3. サイドウォール部

走行中に一番激しく屈曲する部分で、内部の部材を保護する役割があります。

衝撃の吸収、コーナー中のたわみによる車両挙動に影響し、乗り心地に関わってくる部分です。

タイヤメーカー名、タイヤサイズなど、タイヤに関わる情報が刻印されています。


2.4. ビード部

ホイールと接する部分で、空気を充填した時にタイヤをホイールのリムに固定させる役割があります。

ビードワイヤーと言って、鋼線を束ねてリング状にした補強部材をゴムで覆っていて、ホイールリムと
しっかり固定しています。

『タイヤの耳』と呼ばれたりする事もあり、ハメ替えの際に切れたりすると空気が漏れてしまいます。


3. タイヤの表示

タイヤの表示は、前述したとおり『サイドウォール』に様々な情報が表示されています。

タイヤメーカー名、商品名(ブランド)、そしてタイヤサイズ、速度記号や強度表示もあり、製造年月も
表示されています。

愛車に装着しているタイヤの情報は、せめてタイヤサイズがどんなものか、表示されている意味も理解
できていた方が、万が一の緊急時にも役立つと思いますので、是非、参考にしてください。


3.1. タイヤの寸法とサイズ表示の見方

タイヤサイズ表示は、画像のように数字で表されている物です。
IMG_2860
この表示はタイヤサイズの基本になる部分で、最低限知っておいた方が良い部分です。
この画像にある表示を元に説明していきます。

このタイヤサイズは『1955015(イチキューゴ・ゴーマル・アール・ジュウゴ)』と読みます。
         
アンダーラインの部分が様々なサイズを表している部分です。
  • 195:タイヤ幅の呼称、単位:mm
  • 50:偏平率の呼称、サイドウォール部分の高さ、単位:%
  • 15:ホイールリム径の呼称、単位:インチ(約2.5倍で€mmに換算)
グラフィックス1
次に『82V』と表記されている部分ですが、通常購入する際あまり気にしない部分ではありますが
知ってて損はないと思いますので、簡単なご紹介程度に記載しておきます。
  • 82:ロードインデックス(LI)・・・タイヤに与えられる最大荷重
  • V:速度記号・・・走行可能な最高速度を記号で表記
ザックリ言うと、LI:82(荷重:475kg)の状態において、V(最高速度:240km/h)
までの範囲で使用できるタイヤ、と言う事です。

この表記を詳しく調べるには、各タイヤメーカーのホームページなどで調べることができます。


3.2. タイヤの方向性

普段よく見るタイヤは『対称タイヤ』と言って、タイヤの外も内も指定はなく、どの様に取りつけても
パターン(溝)の見え方が変わらないもの、すなわち方向性が全くないものです。

しかしタイヤには 、『方向性=回転方向』のある物が存在します。
その回転方向を『ROTATION:ローテーション』と呼びます。

ローテーションがある理由として、排水効率や運動性能を向上させるため、タイヤに刻まれたパターンに
方向性を持たせているからです。

ローテーションのある物には、タイヤサイズが表示されている『サイドウォール』部分に矢印のような
表示がされています。
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このローテーションを間違えてしまうと、タイヤの性能を発揮することが出来ず、最悪は雨天時の走行で
スリップすることも有りうるので、取り付けの際は注意しましょう。

また、『非対称タイヤ』と言って、タイヤの外と内でパターンやタイヤ形状を変えてある物があり
それについては『INSIDE』『OUTSIDE』の表記があるようです。

いずれにせよ、安全に運転を楽しむには、タイヤの方向性を理解しておいた方が良いと言えるでしょう。


3.3. タイヤ製造年月の見方

知っていると、ちょっと自慢?出来ちゃいそうな知識として『タイヤ製造年月』の見方があります。

表示位置は、タイヤサイズと同じように『サイドウォール』にあり、画像のとおり少し凹んでいる部分に
表記されています。
IMG_2862
この数列のうち、後ろ4桁の『5017』が製造年月に当たります。

見方は、前から『50週、17年』なので2017年の50週目に製造されたもの、と言う事は、大体
2017年12月中旬ぐらいに製造されたタイヤなんです。

海外製のもだと、この表記が片面にしかない場合もあるので、表に見当たらない場合は裏も確認すると
分かると思います。

また、スタットレスタイヤについても同様ですので、もし中古タイヤを購入する際には役立つ知識です。


3.4. タイヤの使用限界と種類表記

タイヤは大事な部品でありながら、消耗品であるというのは言うまでもないことですよね。

消耗品である以上、やはり使用限界があると言う事で、その使用限界を見極めるため、タイヤには
『スリップサイン』と言うものがあります。

スリップサインは、溝の中に約1.6mm.程度の起伏となって存在しています。(画像赤丸)
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タイヤが摩耗し、溝の深さがこの起伏と同じ高さになった時点で、タイヤの各性能が限界に達し、走行に支障が出てくる恐れがあるため、タイヤの交換時期になったと判断します。

このスリップサインがある位置も、タイヤの『ショルダー部』付近に『△』の目印で表示されています。
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他にも、タイヤ交換の交換目安として、タイヤ表面や溝の中に『オゾンクラック』と言うヒビ割れが
目だって来たら、安全確保のため交換した方が良いと思うので、カーショップなどで相談してみましょう。

スリップサインにちなんでもう一つあるのが、タイヤの種別表記です。

種別と言う表現があっているか分かりませんが、『ラジアル』とか『スタットレス』とかもタイヤサイドに
記されていて、その一つとして『M+S』と言う表示もあります。
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これは『マット・アンド・スノー』と言う呼称で、いわゆる『オールシーズンタイヤ』であることを
意味しています。

この『M+Sタイヤ』や『スタットレスタイヤ』には、高さの違う『スリップサイン』がタイヤ1本に
2つ存在しています。

これは、高い方が『スノー用』で、低い方が『サマー用』として使い分けるためですので、タイヤを
上手に使い切る目安としてみてください。


4. タイヤ交換方法

タイヤ交換は、自動車学校の教習でカリキュラムとして組まれているはずですが、せっかくなので簡単に
手順とジャッキアップ時の注意点を記載しておきます。
  1. ジャッキを取り出し、ジャッキアップポイントにジャッキをかける
  2. ジャッキで車体を少し持ち上げる(タイヤは浮かさない)
  3. ホイールナットを全数緩める(取り外さない)
  4. タイヤが浮くまでジャッキを上げる
  5. タイヤが浮いたらホイールナットを取り外す
  6. タイヤを外し交換するタイヤを装着する
  7. ホイールナット全数を底付きするまで締める
  8. タイヤが接地するまでジャッキを下げる
  9. ホイールナット全数を規定の力(約100Nm)で締め付ける
  10. ジャッキを完全に下げる
  11. 再度、ホイールナット全数の締め付け確認をして終了
手順は、多分こんな感じで教わってるんじゃないかと思います。

ジャッキやホイールナット用のレンチは、車のトランクルームなどに乗っています。
例えば、こんな感じに...
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必要な物を取り出し、ジャッキアップポイントにかけるわけですが、ジャッキアップポイントと言うのは
ジャッキをかけて車体を持ち上げても大丈夫な場所、すなわち強度確保されている場所で、取扱説明書に
記載されていますので、作業前に必ず確認してください。

もしジャッキアップポイント以外で車両を持ち上げようとすると、こんな悲惨な結末を迎えますので
絶対に指定されている場所で作業しましょう。
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普通乗用車であれば、ジャッキアップポイントは2つの凹みがあるところの間が通常だと思います。
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ジャッキの溝とジャッキアップポイントをしっかり合わせて持ち上げてください。
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ここで紹介したジャッキは『パンタグラフ』と言うタイプの物で、他にも油圧式の物など様々なタイプが
車載されていますので、取扱説明書をよく読んで作業しましょう。


5. タイヤの保管方法

外したタイヤを保管する場合、気を付けておかないと寿命を短くしてしまう恐れがありますので、保管時の
注意点を守って、タイヤを長持ちさせれるようにしましょう。

まず、タイヤの保管場所を選定するポイントは以下のとおりです。
  • 直射日光が当たらないようにする
  • 雨が当たらないようにする
  • ストーブなど熱源近辺は避ける
  • 油分が飛び散るような場所は避ける
  • 電気火花を発生する機器の側は避ける
紫外線、モーターやバッテリーから発生するオゾンによるゴムのヒビ割れ、高温や水分によるゴムの劣化
また、ゴムは油分を吸収する性質があり劣化を促進する恐れがあるので、上記ポイントを守り保管場所を
選定しましょう。

タイヤにビニール製のシートを被せて保護するのも効果的ですが、スノコなどを使用して通気性を確保
しておくのも良いでしょう。

タイヤを保管する時の置き方について、ホイールセットで保管する場合は、空気圧を使用時の半分以下に
抜いた状態にし、横積みで保管することをお薦めします。

縦方向で保管すると、重みで接地面が変形してしまう恐れがあるので避けた方が良いでしょう。
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タイヤ単品での保管は、縦方向で保管することをお薦めします。

ホイールセットのように横積みしてしまうと、下敷きになっているタイヤが押しつぶされて変形に至る
恐れがあるためです。

いずれにせよ、タイヤは大きな物なので、保管場所が確保できない場合は、カーショップなどの『保管
サービス』を利用すれば、安心して預けられますので検討してみる価値ありですね。


6. まとめ

最近の自動車は、低燃費であることが重要視されているので、スペアータイヤどころかジャッキすら
載っていない事が多くなってきています。

とは言え、タイヤは非常に重要な部品なので交換方法も知っていて損はないはずです。

また、タイヤの基礎的な知識を持っていれば、自動車ライフもきっと楽しいものになるはずです。

自分の意志で動かせる自動車、それにかかわる重要な部品であるタイヤについて、この記事をきっかけに
関心が湧き、何らかの手助けになれば幸いです。